筆者自身も長年この問題に悩まされてきた一人です。商標登録までしていたのに守れなかった経験、Amazonに申告しても何も報告されないまま終わった経験——そのリアルな実態とともに、「では、どうすれば守れるのか?」という対策まで踏み込んでお伝えします。
Amazonには「1商品1ページ」という原則があります。同じ商品を複数の出品者が販売する場合、それぞれが別々のページを作るのではなく、ひとつの商品ページに複数の出品者が集まる仕組みになっています。
この仕組みを利用して、元の出品者(ページ作成者)の商品ページに、無断で別の業者が「便乗」して出品することを「相乗り出品」と呼びます。
消費者からすると、同じ商品ページの中に複数の出品者が並んでいるだけに見えます。しかし実際には、品質・発送スピード・サービスがまったく異なる業者が混在しています。最も安い価格や「カートボックス(おすすめ出品者)」に表示された業者から購入することになるため、消費者は知らないうちに別の業者から買っているケースもあるのです。
偽造品ではなく、正規品をスーパーやドラッグストアなどで購入してAmazonで転売するケースです。商品自体は本物ですが、以下のような問題が生じます。
- ページを作成した正規出品者と価格競争になる
- 発送スピードや梱包品質がバラバラで、消費者が混乱する
- 特に地方限定商品・ご当地商品は、地元で安く手に入るためせどりのターゲットになりやすい
より深刻なのがこちらです。正規出品者が作った商品ページに、偽物や模倣品を販売する悪質な業者が入り込むケースです。消費者は「正規品のページ」だと思って購入しますが、届いたのは偽造品——というトラブルが実際に起きています。
筆者がAmazonで販売していた商品のひとつに、マルタイの九州ラーメンシリーズがありました。卸業者から仕入れ、メーカーにも承認いただいた正規の取り扱いです。
ある時、シリーズのパッケージが変わったため、商品画像と内容を修正してアップしました。九州ラーメン2食入り×2パックセットを8種類バリエーション登録し、確認していたときのことです。商品ページに見慣れない屋号の出品者が表示されていました。しかも、弊社の屋号を商品名の冒頭に付けて、まるで弊社の商品であるかのように見せていたのです。
その業者は転売屋(せどり)で、商品自体は本物でした。おそらくスーパーやドラッグストアで普通に購入したものを転売していたのだと思われます。さらに悪質だったのは、弊社が制作したオリジナルの商品画像をそのまま無断使用していたことです。まったく同じ画像が、別の業者の出品ページに使われていました。
その業者のやり方は巧妙でした。8種類すべてではなく、1種類だけを弊社より少し安い価格で出品してくるのです。
たとえば、弊社が7種類を980円で販売していたとすると、その業者は1種類だけを970円で出品してきます。するとその1種類のカートボックスが相手に奪われてしまうため、弊社はその商品を960円に値下げして対応する——そういういたちごっこが続きました。
価格の変更作業自体はすぐに終わります。筆者が一番気になったのは、お客様への影響でした。
弊社は注文いただいたら翌日に出荷していましたが、その転売業者の出荷目安は「5〜7日」と表示されていました。弊社のページから買ったつもりのお客様が、知らないうちに別の業者から購入し、想定より遅い配送に戸惑われる——そのことが、売上よりもずっと気になりました。
まずブランド登録(Amazon Brand Registry)を確認しました。登録は間違いなく済んでいます。次にAmazonにメールと電話で連絡し、状況を説明しました。
Amazonの担当者は「その業者に忠告します」と答えてくれました。しかしその後、どのような連絡をしたのか、どういう結果になったのか——一切報告がありませんでした。対応したのか、していないのか。それすら知らされないまま終わりました。
その後、商標登録をしていたため、相乗り出品業者に対して直接「商標侵害になるため出品をやめてほしい」と連絡しました。それでも相手は出品をやめませんでした。弊社が閉店した後も、その業者は弊社の作った商品ページで出品を続けています。
- 「忠告する」と言ったきり、結果の報告が一切ない
- 相手にどう伝えたか、経緯がまったく不透明
- 商標登録済みでも、相手業者を強制的に止める手段にはなりにくい
- 個々の出店者の声は、プラットフォームの前では届きにくい
「ブランド登録や商標登録をしていれば守られるのでは?」と思う方も多いでしょう。しかし実際は、それだけでは不十分なのが現実です。
Amazon Brand Registryはブランド保護のための仕組みですが、転売屋の相乗り出品に対しては効果が限定的です。商標登録も、相手に直接警告することはできますが、強制的に出品をやめさせる手段にはなりにくい。
Amazonというプラットフォームの力の前では、個々の出店者の声はなかなか届かないと実感しました。
これは筆者だけが感じてきた問題ではありません。
東京地裁はAmazonに対して3,500万円の賠償を命じる判決を下しました。
この訴訟は、主力ブランド商品の偽造品が相乗り出品されたにもかかわらず、Amazonが適切な対応を怠ったとして提訴されたものです。裁判所は「申告を受けたにもかかわらず、正規品ごとページを削除した対応には重過失がある」と判断しました。
出品者がブランドを守ることの難しさは、司法の場でも認められたのです。
ただし、判決が出た後も相乗り出品という仕組み自体がなくなったわけではありません。構造的な問題は現在も続いています。
「対策をしても守れなかった」という筆者の経験を踏まえた上で、それでも知っておくべき対策をご紹介します。効果の高い順に、正直にお伝えします。
根本的な解決策は、「そもそも相乗りできない商品を作ること」です。自社オリジナルのOEM商品であれば、まったく同一の商品は存在しないため、相乗り出品自体が成立しません。
- 自社ブランドで製造した商品は、相乗りされる心配がない
- 価格競争に巻き込まれず、安定した利益が見込める
- ブランドとしての世界観・ストーリーを作れる
ただし、初期投資・在庫リスク・商品企画の手間がかかるため、中長期的な戦略として検討する価値があります。
商標登録はブランド保護の法的な土台です。商標権を取得した上でAmazon Brand Registryに登録することで、以下のメリットが得られます。
- 相乗り出品者への法的な取り下げ申請が可能になる
- 商品ページの編集権限が強化される
- A+コンテンツ(高品質な商品説明)やブランドストアが使える
- スポンサーブランド広告が利用できる
ただし筆者の経験上、転売屋の相乗りを完全に防ぐことは難しい場合もあります。あくまで「武器のひとつ」として捉えてください。
商品単品ではなく、関連商品とのセット販売にしたり、オリジナルのおまけを付属させることで、転売屋は同じ構成を再現できないため相乗り出品を防ぎやすくなります。
- 例:食品 → 商品+オリジナルレシピカード付き
- 例:シャンプー単品 → シャンプー+専用トリートメントのセット
FBAとは、在庫をAmazonの倉庫に預け、発送・カスタマー対応をAmazonが行うサービスです。FBAを利用することで、カートボックスの獲得率が上がりやすく、相乗り出品者との競争で優位に立ちやすくなります。
転売屋の多くは自己発送のため、FBAを利用する正規出品者の方がAmazonからの評価が高くなる傾向があります。
相乗り出品者が偽造品・模倣品を販売している場合は、Amazonの知的財産権侵害申告フォームから申告することができます。(申告フォームはこちら)
申告手順:セラーセントラル →「ヘルプ&カスタマーサービス」→「知的財産権の侵害についての申し立て」→「知的財産権の侵害を申告」
ただし申告後の経緯が報告されないこともあります。申告して終わりではなく、継続的にフォローする必要があります。
| 対策 | 効果 | 難易度 | 費用 |
|---|---|---|---|
| OEM・オリジナル商品 | ◎ 転売屋対策に有効 | 高 | 高 |
| 商標登録+Brand Registry | ○ 有効 | 中 | 中 |
| セット販売・おまけ付け | △ 暫定的 | 低 | 低 |
| FBA活用 | ○ 有効 | 低 | 中 |
| 知的財産権侵害申告 | ○ 有効(偽造品の場合) | 低 | 無料 |
- 地方限定商品・ご当地商品は、地元で安く買えるためせどりのターゲットになりやすい
- ブランド登録・商標登録は必須だが、それだけでは守りきれないケースがある
- Amazonへの申告は、対応結果が報告されないことも多い。過度な期待は禁物
- 長期的に守るには、OEM・オリジナル商品という「相乗りされない土台」を作ることが本質的な解決策
- 商品ページの「出品者」欄を必ず確認する習慣をつけよう
- 複数の出品者が並んでいる場合、最安値が必ずしも安心とは限らない
- 発送元・出荷日数・ストア評価を確認してから購入を
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